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1.部屋で

 例えば彼に暗い過去があった、と言って嬉しい、なんて年がいつだったかもう思い出せなくて、そう、それはPENISILLINが流行った、高校生くらいだったかしら。あのころは告白されるのがかっこよかったし、浮気されるのもかっこよかったし、修羅場って今思えば修羅場のシュ、にも到達していないようなことで、それでまあ私も人並みに遊園地に行って手をつないでキスしていつの間にか大事な人が出来て大人になった。
  

 訂正。大事な人を作って大人になった。60年前のことだ。


 ぴゅろぉー、と笛吹ケトルが間抜けに泣きだす。すぐ止めてやらないと。松原の公団住宅(あ、今はUR、というのだ。)の壁は薄くて、隣の幸子(46歳×1)が今か今かと怒鳴りこんでくるタイミングを探っている。怒ることが目的化した幸子を見ると、悲しいようなでもそれでも幸せのような、昔の自分を見ているような、不思議な気持ちになる。97℃に覚ましたお湯を、ポットに注ぐ。擦れた字で、”カレルチャペック喫茶店”と書いてある。



 幸子は、もうどれくらいセックスしていないのかしら。



 おばあさんになったのに、いやらしいことを考えている自分を、ちょっとかわいらしく思う。別にそれで背徳感を感じるなんてことはないのだけれど、ちょっとかわっているな、とはずっと思っていた。そうだ、おばあちゃん、と呼ばれることに慣れたのはいつからだろうか。私はずっと連続しているつもりなのに、いつの間にか母が死んで、父が死んで、娘が死んだ。髪に白いものが混じり、なんて表現がうそみたいに・・・

 紅茶の色が94℃のお湯に移ってくる。マグカップに注ぐ。ブランデーを少し入れて、牛乳と砂糖も入れる。趣味が悪いね、と言われるけど、そして誰に習ったか忘れてしまったが、飲み方だけは習慣になってしまった。

 床に目を遣る。

 ふうっ、腰回りに少し肉がついて重くなった体を持ち上げて、スーパーのチラシを見る。チラシを見て買うものが変わるわけでもないけれど、とりあえず見てみるのだ。

 晩御飯の準備をしなければならない。そう、いつものように。


2.公園
 世田谷区が東京らしい、というのは田舎者のセリフだと思う。徒歩15分の団地からてくてくと歩いて行ってすれ違ったのはミケ猫だけ。


3.こども
 
 

いっていた気もする。思い出すと、背中のあたりが暑くなる。

>>me
あdさfdd







梅干はひっくり返してひっくり返しておいしくなる。

キャラ
おばあちゃん
アレハンドロ(ボリビア

スパゲッティなんて、良く言ったものだ。